ずれる訳
英語を日本語に訳すと、言葉がずれてしまう場合があります。
例:More than three people came to the party.
more thanは「…以上」ではなく、「…より多い、…超」の意です。つまり、「≧」ではなく「>」の意です。
したがって、この英文の訳は、「パーティーには4人以上の人が来た」とするのが正確です。「3人以上」だと「3人」も含んでしまうので、英文と意味がずれてしまいます。英語はthreeなのに、日本語だと「4」になってしまうわけです。
このような「訳がずれる例」は、ほかにもあります。
例:The shop is closed until Monday.
この英文は「月曜まで閉店」という意味にとってしまいたくなりますが、それは不正確です。日本語で「月曜まで閉店」と言ってしまうと、「月曜まで休みだから、火曜から店が開くんだな」と捉えてしまいます。しかし、英文はそうではなく、「月曜になるまで閉店」→「日曜まで閉店で、月曜から店が開く」という意味です。
したがって、この英文は、「日曜まで閉店(月曜開店)」と訳すのが正しいということになります。英語はMondayなのに、日本語だと「日曜」になってしまうわけです。
untilの語法については、どんな学習用英和辞典でも詳しく説明されています。ぜひ一度目を通しておきましょう。
また別の例です。
例:(男性がジョギングしている場面で)Nine minutes for the first mile.(中略)Into the second mile his pace was down to eight minutes a mile.
訳は次のようになります。
- 「(彼は)最初の1マイルを9分で走った。そして次の1マイルでは8分へとペースが上がった。」
これはちょっと面白いですね。英語はdownなのに、日本語では「ペースが上がった」になっています。
この英文は解釈に一瞬戸惑うところですが、his pace was down (to eight minutes a mile)「ペースが下がって1マイル8分になった」のように解釈するのではなく、his pace was eight minutes a mile「ペースは1マイル8分になった」という表現があって、このeight minutesの部分にdown toがかかっていると考えるべきでしょう。所要時間が9分から8分へと減っているので、downとなるわけです。
ということで、スピードは上がっているのだから、結果としては「ペースが上がった」と訳してまったく問題ないことになります。
とはいえ、英文でdownとあるのに、日本語で「上がった」と訳すのは勇気がいります。もうちょっとdownを直訳調に訳せないものでしょうか。
試訳としては……。たとえば、「彼のペースは、1マイル9分かかったのが8分に下がった」とすればdownを直訳できていることになります。しかし、この訳だと日本語では「ペースが下がった」と読めてしまうので語弊があります。「1マイル9分かかったのが8分に下がるというペースになった」などとすれば、どうにかdown「下がる」を訳出しつつ語弊を避けることができそうです。でも、これでは日本語としていささか拙い感じがします。こうした訳にするくらいなら、最初の「1マイル8分へとペースが上がった」という訳のほうがシンプルでずっと分かりやすいですね。
このように、英語を学んでいくと、日本語では英語と字面がずれてしまう例がいくつか見つかります。ぜひ類例を収集していってください。