ナルシシスト数 | 英進館

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中高一貫部 数学コラム

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ナルシシスト数

数学に触れていると、「○○数」という言葉がたくさん出てきます。

「自然数」「素数」「合成数」あたりはすでに知っている人が多いでしょう。「虚数」「複素数」も高校数学で出てきます。「三角数」「四角数」「回文数」「フィボナッチ数」「友愛数」「グラハム数」あたりはどうでしょうか。どんな数か、ぜひ調べてみてください。

さて、今回は「○○数」の例として、「ナルシシスト数」を紹介したいと思います。
ナルシシスト数とは、「n桁の自然数で、その各桁の数のn乗の和が、もとの自然数に等しくなる数」のことです。

たとえば、371や1634はナルシシスト数です。

  • 33+ 73+ 13= 27 + 343 + 1 = 371
  • 14+ 64+ 34+ 44= 1 + 1296 + 81 + 256 = 1634

自己愛が強いことをナルシシズムといいます。ギリシア神話に登場する美少年ナルキッソスが、水面に映る自らの姿に恋をしたというエピソードに由来しています。このナルシシスト数も、自身の数を水面に映して表現しているような比喩となっています。

ナルシシスト数を小さい方から並べてみると、1、2、3、4、5、6、7、8、9、153、370、371、407、1634、8208、9474、...と続いていきます。

ではどこまで続いていくのでしょうか。言い換えると、ナルシシスト数は有限個なのでしょうか、無限個なのでしょうか。証明できますか?

この問題は、中学数学レベルで理解できます(厳密な証明は高校数学レベル)。ぜひ自分でちょっと考えてから、次の説明を読んでほしいと思います。

証明してみよう

n 桁の自然数Nを考えます。各桁の n 乗和が最大になるのは、各桁の数字が9の場合なので、その和は 9n+ 9n+ ⋯ + 9n= n × 9n となります。

一方、n 桁の自然数のうち最小のものは 10n−1ですので、N ≧ 10n−1 となります。

よって、Nがナルシシスト数ならば、n × 9n ≧ 10n−1 となります。
これを変形すると、

10(10
9
)n……☆

となります。

(10
9
)n
のように指数に文字の入った関数を指数関数をいいます。指数関数の厳密な取り扱いは高校数学の数Ⅱや数Ⅲで学びますが、概略は中学数学の範囲でも理解できます。

たとえば、an と 2a の振る舞いはどのように違うでしょうか。

まずは a = 2 の場合、つまり 2n と 2n の違いについて考えてみましょう。 2n n の値によらず n が1増えるごとに2ずつ増えていきます。
一方、2n n が1から2に増えるときは2から4へと2しか増えませんが、n が10から11に増えるときは1024から2048へと1024も増えます。

このように a が1より大きい場合(たとえば2n)は、指数関数 y = ann が大きくなるにつれて爆発的に増加していきます。逆に、a が1より小さいとき(たとえば0.1n)は、y = ann 大きくなるにつれ爆発的に減少していきます。

では、

10(10
9
)n……☆

に戻りましょう。

左辺の10n n の値によらず一定の割合で増加しますが、右辺の(10
9
)n
n が大きくなると爆発的に増加していくことがわかります。
n = 1のときは、10 ≧(10
9
)
n = 2のときは 20 ≧100
81
といったように、n が比較的小さい場合は☆の不等式は成り立ちますが、nが大きくなると(10
9
)n
が爆発的に増加し、いずれは 10n を超えてしまう(☆が成り立たなくなる)ときがやってくるだろうとわかります。

ちなみに、計算すると、n = 61で不等式が成立しなくなります。つまり、61桁より小さいときにしかナルシシスト数は存在しないとわかるのです。

以上から、ナルシシスト数は有限個しか存在しません。

最大のナルシシスト数は 115132219018763992565095597973971522401です。

数学ではこのように、面白い名前のついた数や数列や定理などがあり、中学数学・高校数学の範囲でもかなりのところまで理解できます。ぜひ興味をもって学んでいってもらいたいなと思います。

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