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中高一貫部 英語コラム

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英語の重箱読み・湯桶読み

日本語の漢字の熟語で、「重箱読み」「湯桶読み」というものがあります。

実は英語にも似た単語があるということを知っていますか。

2007年神戸市外国語大学の入試問題で、次のような一節が出てきます。

When the word 'television' came into general use, one academic complained that no good would come of an invention that had a half-Greek, half-Latin name.

訳すと次のようになります。

「『テレビジョン』という語が広く使われるようになったときには、ある学者が、半分ギリシア語由来、半分ラテン語由来の名前をもつ発明からは、ろくなものが生まれないだろうと文句を言った。」

英語にはゲルマン語由来の語だけでなく、ギリシア語やラテン語由来の語が多く入ってきています。また、歴史的な事情で、日常的な語彙はゲルマン語由来、学問的な語彙はギリシア語・ラテン語由来というケースが多くなっています。

日進月歩の科学の世界では、絶えず新しい概念や発見・発明が生まれ、そうしたものを表すために、新しい言葉が必要となります。新しい言葉が作られる際には、多くの場合、ギリシア語やラテン語の語彙が用いられるのです。

本来であれば、一つの新しい言葉を作るためには、「ギリシア語系の語彙ばかりを用いて作る」か、あるいは「ラテン語系の語彙ばかりを用いて作る」のが伝統的に正しいと考えられていたのですが、現在では必ずしもそうとは言えなくなっています。

そういうわけで、言葉にうるさい人に言わせると、ギリシア語とラテン語の語源が混在した語は美しくなく、けしからん造語法だということになります。

televisionという言葉は、現在ではすっかり英語に(日本語にも)定着していますが、この語が登場したころは、「遠い」という意味のteleはギリシア語由来、「見ること」という意味のvisionはラテン語由来なので、「ギリシア語とラテン語が混ざっていて美しくない語だ」と見なされたわけです。

ただ、ギリシア語源とラテン語源が混在した語は、現在でも少数派であるというのは間違いありません。

そこでふと考えたのですが、これは日本語の重箱読みや湯桶読みと事情が似ていますね。

日本語ではふつう熟語は「訓読み+訓読み」か「音読み+音読み」となることが多いのですが、稀に「音読み+訓読み」や「訓読み+音読み」になっている語があります。

「音読み+訓読み」というパターンを重箱読みと言います。重箱という語は「ジュウばこ」というように「音読み+訓読み」になっているからです。また、「訓読み+音読み」というパターンを湯桶読みと言います。湯桶という語は「ゆトウ」というように「訓読み+音読み」になっているからです。

重箱読みや湯桶読みは、慣用として定着してしまえば間違いとは言えませんが、やはり用例は多くなく、人によっては違和感を感じることもある読み方です。音読みは漢語由来、訓読みは和語由来ですから、「語源が混在すると不自然に感じられる」という点でtelevisionと似ていると考えてよいでしょう。

さて、重箱読みや湯桶読みの例をどれだけ思いつきますか?気になる人はちょっと例を考えてから調べてみて下さい。