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中高一貫部 英語コラム

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おじさんたち

今回はちょっとした文法の話です。

英語では、名詞に単数形・複数形という厳密な違いが存在します。では、日本語にはこうした単数複数の違いはあるのでしょうか。

日本語でも、名詞の末尾に「ら」(彼ら)、「たち」(おじさんたち)といった表現を付け加えることで、複数形を作ることができるようにも思われます。「国々」、「人々」などの「々」もそうですね。こう考えると、日本語は語尾に -(e)sをつけて複数形を作る英語と似ていると言えるかもしれません。

ですが、「たち」は本当に複数形と言えるのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。

例文で考えてみる

ひとつめの例です。「友だち」は「たち」がついています。でも、これは「友」の複数形とは限りませんね。1人でも「友だち」と言えるからです。「友」と「友だち」の違いは、単数か複数かというより、むしろ、「友」は文語体の硬い表現で、「友だち」は口語的で柔らかい表現であるという使い分けのことが多いでしょう。そう考えると、「たち」は複数形を作るとは言えなくなります。

ふたつめの例です。たとえば「おじさんたち」という表現は、本当に「おじさん」の複数形と考えてよいのでしょうか。つまり、英語のunclesと同じと考えてよいのでしょうか。

「昨日おじさんたちがうちに来たんだ」という日本語を考えてみましょう。

もちろん、この日本語は場合によっては次のように訳すことができます。

(1) Yesterday my uncles visited us.

しかし、よく考えてみると不自然です。

「おじさんたちがうちに来た」という場合、日本語ではふつう、「複数のおじさんが来た」というよりも、「おじさん一家が来た」ということを意味することのほうが多いのではないでしょうか。

とすると、英語では次のように書くのが正しいことになります。

(2) Yesterday my uncle and his family visited us.

もちろん、文字通り「複数のおじさんがきた」(たとえば「神戸のおじさんと山形のおじさんと札幌のおじさんが来た」)ということも可能性としてはありえるわけで、それなら(1)の英文でよいのですが、しかし、(2)のほうが状況としてはふつうでしょう。

似た例を挙げます。

authorsは「著者」の複数形ですが、日本語の「著者ら」という表現は、著者の複数形というより、著者だけでなく、著者以外の人(たとえば編集者、取材者、協力者、共同研究者など)まで含んでいる場合がほとんどです。つまり、authorsと「著者ら」はイコールではありません。

こうした例から考えると、英語の単数複数の概念は、日本語の「たち」「ら」などとは異質なものであるとわかります。

まとめ

今回お伝えしたかった内容は次の通りです。

1.「文法」というと、生徒からはたいてい「嫌い」という反応が返ってくるのですが、上の話のように、気軽に読めて「なるほど」と思える部分もたくさんあります。文法はむしろ学んで楽しいものです。

2.生徒のみなさんは、ぜひ友達に「『昨日おじさんたちがうちに来たんだ』という文を英語に直して」と問題を出してみましょう。すんなり訳せた人はなかなかの実力者だと思います。