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年代表示銘

英語では「年代記」のことをchronicleと言います。chron-はギリシア語由来の接頭辞で「時」の意。この接頭辞が入った語としては、たとえば大学入試レベルの語としてはchronic「長期にわたる;慢性の」があります。対義語はacuteで「急性の」。

また、ストップウォッチ機能のついた腕時計のことをクロノグラフ chronographと言いますが、これも「時(chrono)を図示したもの(graph)」という意味。

このchron- という接頭辞が入った語の中にchronogramというものがあります。chronogramは「年代表示銘」などと訳しますが、訳してみても何のことかよく分かりません。そこで、今回はこの年代表示銘の紹介です。

年代表示銘とは

「年代表示銘」chronogramとは、「文によって年代を示したもの」という意味です。たとえばリーダーズ英和辞典には、年代表示銘の例として、LorD haVe MerCIe Vpon Vs.という文が挙げられています。

この文はこのままでは読みにくいですね。普通の英文に直すと、Lord have mercy upon us.となります。アルファベットのvとuはもともと同じだったので、Vpon Vsはupon usのこと。この文は「神よ、我らに慈悲を」の意です。

さて、元の文中の大文字の部分をローマ数字として読んで足していくと...

L+D+V+M+C+I+V+V
=50+500+5+1000+100+1+5+5
=1666

つまり、LorD haVe MerCIe Vpon Vs.という年代表示銘(chronogram)は、「1666年」という年代を表示しているのです。この文は、1666年にロンドンで疫病が流行した際に、護符として家の戸口に掲げられたものだそうです。英文自体に意味があり、かつ年代をも示している。これがchronogramの面白いところです。

ほかにいくつか例を挙げておきましょう。

MerCy MiXes with CharIty at Xmas.(聖夜には慈悲と慈善が混ざり合う。)

=M+CM+XC+IX
=1000+900+90+9
=1999

My Day Is Closed In Immortality.(私の時代は不朽のうちに幕を閉じる。)

=M+D+I+C+I+I
=1000+500+1+100+1+1
=1603

1603年に亡くなったエリザベス1世を追悼する文です。

ChrIstVs DuX ergo trIVMphVs.(キリストは主であり、ゆえに勝利する。)

duxはleaderの意、ergo は thereforeの意のラテン語。この文は英語ではChrist the Leader,therefore triumphant.の意。スウェーデン王グスタフ・アドルフ(在位1611〜32)が1627年に鋳造したコインに記された文。

=C+I+V+D+X+I+V+M+V
=100+1+5+500+10+1+5+1000+5
=1627